中国模型メーカーの台頭はプラキットだけでなく、エッチングパーツなどのアフターパーツの分野にも及んでいきました。

艦船模型専用エッチングパーツというと西暦2000年前後くらいまではゴールドメダル、トムス モデルワークスやホワイトエンサインモデルズといった欧米のメーカーの製品が主流でした。しかし、中国模型メーカーはプラキットだけでなくエッチングパーツなどのアフターパーツの世界にも進出してきたのです。

中国の艦船模型専用エッチングパーツで私が最初に使い始めたのはライオンロアというメーカーの製品でした。 それ程安価とは思いませんでしたが、各国軍艦のレーダー、クレーン、手すりなど様々な種類のものが製品化されていました。 私はかなり長い期間、艦船模型専用エッチングパーツとしてライオンロアの製品を使用していた記憶があります。非常にモールドが繊細でとにかく線が細い印象がありました。

他の中国のメーカーで日本で出回っていたのはフライホークのエッチングパーツでした。ただ、私のフライホークのエッチングパーツの最初の印象は、「ライオンロアのに比べると繊細でなく大雑把だな。」というものでした。そのため、当時の私は同じものがライオンロアとフライホーク両方から製品化されていると、ライオンロアのエッチングパーツを選んでいた記憶があります。ライオンロアやフライホークのエッチングパーツには「XX用ディティールアップセット」と題してエッチングパーツ数枚組+真鍮砲身+レジン製パーツといった豪華(高価)なアフターパーツもありました。(222)の左側の箱はフライホークから発売されているトランぺッターの1/700独駆逐艦Z-7用のディティールアップセットで、(222a)に写っているのはピットロード(トランぺッター)の1/700独巡洋艦プリンツ・オイゲンのキットと、同じくフライホークから発売されている同キットの専用ディティールアップセットです。このディティールアップセットはトランぺッターのプリンツ・オイゲン専用で、タミヤのプリンツ・オイゲン用には別のセットが発売されています。おそらく同じディティールアップパーツでもメーカーによって部品との合いが異なるので、フライホークはトランぺッター、タミヤそれぞれのキット専用のディティールアップセットを発売しているのだと思います。 そてにしても、フライホークのこだわりもすごいですね。

中国のアフターパーツメーカーはライオンロアやフライホークにとどまらず、ファイブスターモデル((223)参照)やレインボーモデル((224)参照)をはじめとして様々なメーカーが誕生していっています。

更に中国メーカーの中にはアフターパーツの開発で培った経験や技術を生かして艦船プラキットの製品化まで行うメーカーまで現れたのです。 そのメーカーとはフライホークでした。フライホークはまずは手始めとして小型艦である1/700のUボートの製品化を行いました。製品化されたものにはU-48のようにドックも製品の中にいれてディオラマ仕立ての製品にしたものもありました((226)参照)。

そして、そのように小型のUボートのプラキットを製品化させたフライホークですが、ついに巡洋艦クラスの製品化を実現したのです。製品化の対象は英防空巡洋艦ダイドー級のナイアドでした。 艦船ファンには非常に人気のあるダイドー級の製品化ということで製品化に関してはかなりの期待が集まりました。 そして、発売されたフライホークのダイドー級のキットは人気のある艦というだけではなく、 これまでの1/700艦船模型の常識を覆すような精緻な艦船模型キットだったのです。 フライホークから発売されたナイアドは大きな話題を集め売れ行きも好調だったと思います。私も某模型雑誌でナイアドの製作記事を担当させていただきましたが、 キットの入手に苦労する有様でした。

(227)がフライホークのナイアドのキットで、(227a)、(227c)がキットの内容物です。当時の1/700の巡洋艦クラスのキットとしては異例の部品数の多さでした。このフライホークのナイアドのキットは、梱包にもかなり力が入れられていて、(227b)のように「HMS NAIAD」の文字が切り取られた黒い背景紙がマスト部品のパックに使用されていました。また、キットの箱は完成したナイアドを飾ることができるような構造になっていました((227d)参照)。

その後も、フライホークは継続して超精密1/700艦船模型キットを次々と製品化し続けています(2022年7月時点)。 製品化する艦もドイツの軽巡やイギリスの巡洋艦など、これまで1/700艦船模型の模型化の対象にならなかったものが多く非常にありがたいです。 これらのフライホークの超精密キットは雑誌の依頼も含めてかなり作りましたね。

フライホークは(229)の写真に写っているようなプリンス・オブ・ウェールズといった戦艦級のキットやディオラマキットも製品化しています。私はフライホークの戦艦やディオラマのキットはまだ作ったことがありませんが...。

中国の模型関連のメーカーは新規メーカーの登場も多く、スノーマンモデルという中国のメーカーからは米ギアリング級の1/700精密キットが製品化されています。

西暦2000年前後くらいにはまだ存在感のなかった中国の模型メーカーですが、 中国の模型メーカーは今や我々モデラーにとって無くてはならない存在になってきているのです(つづく)。