HMS Calcutta

HMS Calcutta 1941 (Trumpeter 1/700)

今回の製作記ではトランぺッターから発売されたC級防空巡洋艦のカルカッタを製作します。

イギリス海軍は1930年代半ばごろから旧式のC級、D級軽巡洋艦を活用するため、これらの艦を防空巡洋艦に改造する工事を開始しました。旧日本海軍でも大戦中5,500トン軽巡の五十鈴を防空巡洋艦に改造した例はありますが、大戦前から防空艦の必要性を認識し旧式の巡洋艦を防空巡洋艦に転用することを考え実行したイギリス海軍の先見性はかなりのものと思います。イギリス海軍はシアリーズ級から3隻、ケープタウン級からケープタウンを除く4隻、 D級ではデリーが防空巡洋艦に改造さました。これらの艦は対空兵装を搭載した貴重な戦力として常に最前線に投入され消耗品のように酷使されました。それだけに損害も大きくシアリーズ級3隻は大戦中全艦失われ(うちキュラソーは作戦中に輸送船クイーン・メリーと衝突し沈没)、ケープタウン級4隻はカイロ、カルカッタが戦没、カーライルは1943年にドイツ機の攻撃を受け修理不能となり宿泊艦として使用された後放棄されました。結果として第二次大戦で生き残ったのはコロンボだけでした。 D級のデリーは1942年にニューヨーク工廠で大規模な防空巡洋艦への改造が行われ大戦を生き残りました。

トランぺッターのカルカッタのキットですが、以下の写真が内容物です。日本では去年(2022年)末から店頭に並び始めました。部品をざっと見た限りでは上部構造物や船体などにスライド金型を利用した好キットに見えます。トランぺッターのホームページを見ると、艦橋を近代的な塔型に改造されたコロンボも1/700での製品化が予定されています。

カルカッタは1919年8月21日にヴィッカース社で完成しました。1939年に防空巡洋艦に改造され第二次世界大戦に臨みました。 1940年5月にダンケルク撤退作戦に参加し、1940年8月末に地中海艦隊に編入されました。カルカッタは1941年6月1日、クレタ島の戦いでクレタ島から撤収する陸軍部隊収容の帰途、ドイツ空軍の爆撃を受けクレタ島沖で沈没しました。

カルカッタはの資料としてはProfile Morskieから特集本が発売されています。欧州海戦史第30話で防空巡洋艦カイロを製作したときも参考にしました。

今回の製作では、カルカッタを最終状態(Profile Morskie表紙の迷彩塗装)で仕上げようと思います。

製作記(その9) - まとめ

トランぺッターの英防空巡洋艦カルカッタがついに完成しました。

前回、ボートダビットのバンドに0.1mm厚のプラペーパーを使用したことを書きましたが、なかなか細く切り出せませんでした。前回よりも幅の細い帯をなんとか切り出してバンドを作り直しました。あまり、細くするとボートダビットに接着する際にちぎれやすくなるので、0.1mm厚のプラペーパーをバンドに使用する場合は下写真くらいの幅が限界のようです。

下写真は欧州海戦史第30話で製作した同じケープタウン級防空巡洋艦のカイロと一緒に撮影したものです。カイロはHPモデルのガレージキット防空巡洋艦コロンボを改造して製作しました。

以下、カルカッタのクローズアップ写真です。カイロと並べて撮影しました。

以前製作した英巡洋艦ベリックと並べて撮影した写真です。重巡、軽巡の違いはありますが、カウンティ級と比較するとC級防空巡洋艦はかなり小型の巡洋艦であることが分かります。

以下の写真は、カルカッタを左舷と右舷それぞれ真横から撮影した写真です。資料が少ないので、かなり推定がはいった迷彩パターン(特に左舷)ですが、今回の作例の迷彩塗装がよくわかる写真かと思います。

最後に、箱と一緒に作例を撮影した写真です。

今回、初めてトランぺッターの新しい1/700艦船キットを製作しましたが、「スライド金型の上部構造物は作りやすくていい」という感想を持ちました。旧作のように側面と上面を箱組する部品構成だと正確な形状に組むのが大変なのと合わせ目を消すのが大変です。合わせ目が上面にある場合はまだ合わせ目を消しやすいのですが、側面に合わせ目がある場合は側面のモールドを残して合わせ目を消すのが難しいです。結局、「扉などのモールド全て削り落として合わせ目消したあとで、エッチングパーツやプラ材で側面のモールド再生」となってしまい、かなり工数がかかってしまいます。今回の製作で製作期間が比較的短かったのは、スライド金型の上部構造物のおかげかと思っています。

あと、艦橋の羅針儀や双眼鏡、甲板上の弾薬入れなど細かい部品が多くなったのも従来のキットと異なる点かと思いました。中国ではフライホークやベリーファイアなど1/700で超精密艦船キットを発売している模型メーカーが登場してきているので、トランぺッターもこれらのメーカーを意識しているのかもしれません。

キットの全体の仕上がりですが、なかなかC級防空巡洋艦の印象をよく捉えていると思います。トランぺッターのホームページをみると、艦橋が近代化された同型艦のコロンボも製品化予定に入っているので、発売されたらコロンボも作ってみたいです(おわり)。(2023/4/30)

参考資料

PROFILE MORSKIE 38 HMS Calcutta ISBN: 83-87918-46-6

Warship Perspectives Camouflage Volume One: Royal Navy 1939-1941 by Alan Raven

丸グラフィック・クォータリーNo.26「写真集英国の巡洋艦」/ 潮書房

世界の艦船 No.517(増刊第46集)「イギリス巡洋艦史」/ 海人社, ISBN: 4-905551-57-9

使用した主なアフターパーツ

ファインモールド - 1/700 WWⅡ英海軍 QF 2ポンド"ポンポン砲"四連装 (WA36)

ファインモールド - 1/700 12.7mm四連装機銃＆ 20mm単装機銃(WWⅡ英国艦用) (WA41)

製作記(その8)

今回も前回に引き続き上部構造物の部品を船体に取り付けています。

(81)～(83)キットのボートダビットの部品にはボートを吊るす部分がないので、0.2mm真鍮線で追加しました。まず位置決めのためボートダビットに0.2mmドリルで浅い穴をあけ、次に0.3mmドリルで取り付け穴をあけました。開けた穴に0.2m真鍮線を通し瞬間接着剤で接着しました((81)参照)。接着剤が乾いたら不要な部分をカットします。ボートにも取り付け位置に0.3mmドリルで穴をあけて((82)の赤丸)ボートダビットに瞬間接着剤で取り付けました。
ボートを固定するバンドは0.1mm厚のプラペーパーで自作しました((83)の赤丸)。これまではプラの平棒を火であぶって伸ばしたものを使用していましたが、材質が固くボートダビットに取り付けにくい欠点があるので今回はプラペーパーを使用しました。本当はバンドは写真の半分くらいの幅なのですが、カッターで細いプラペーパーの帯を切り出すのが難しく写真のような仕上がりになってしまいました。バンドの工作方法は今後の課題ですね。

(84)キットの煙突の部品がやや太めだったので、0.4mmプラ棒(Plastruct MR-15)で自作しました。(84)の赤丸中がキットの部品で、白いのがプラ棒で自作した煙突です。

(85)艦橋上部のマスト(空中線支柱?)もキットの部品がやや太めだったので、0.3mm厚のプラ板と0.2mm真鍮線で自作しました。(85)の赤丸中がキットの部品で青丸中が自作した部品です。

(86)～(87) 張り線や軍艦旗を取り付けて完成です。

次回は英防空巡洋艦カルカッタの製作記をまとめます(2023/4/22)。

製作記(その7)

再び前回に引き続き上部構造物の部品を船体に取り付けています。

(71)後部マストは真鍮線で自作しました。主要部分は0.4mm真鍮線を使用し、ヤード((71)の赤丸)には0.3mm、ガフ(揚旗斜桁)((71)の青丸)には0.2mmの真鍮線を使用しました。マストトップの短波方向探知機(HF/DF)((71)の緑丸)は他キットの余ったエッチングパーツを使用しました。

(72)～(73) 大戦中のカルカッタの写真を見ると煙突間には構造物が設けられていたようなのでプラ板で自作しました((72)の赤丸)。また、後部マスト前の構造物は大型化されていたようなのでプラ板で作り直しました((72)の青丸)。 (73)は後部マスト前の構造物の元の部品とプラ板で作り直した部品です。

(74)～(75) 兵装類やプラ板で自作した対空砲(主砲)のシールドを取り付けました。

(76) 艦橋後部のクレーン((76)の赤丸中)はプラの部品が太めだったので0.3mm真鍮線で作り直しました。

残す作業は、ボートダビット(艦載艇)、手すり、張り線、軍艦旗の取り付けのみとなりました。次回こそは完成を目指します(2023/4/15)。

製作記(その6)

前回に引き続き上部構造物の部品を船体に取り付けています。

(61)艦橋トップの防空指揮所(?)下部の補強材を0.3mmプラ板で自作しました((61)の赤丸中)。キットには補強材のモールドがありましたが、かなり小さかったのでモールドを削って自作しました。補強材の丸い穴(補強材の重量軽減のためのもの)は0.4mmのドリルで開けました。

(62) (61)の補強材を自作したときに気付いたのですが、3脚の防空指揮所への取り付け位置が間違っていました。組み立て説明書では防空指揮所の中央の穴に取り付けるように指示しているのですが、もっと前の方の穴に取り付けるのが正しいようです((62)の赤い矢印)。

(63)～(64) 最新のカルカッタの製作状況の写真です。あまり作業が進んでいないように見えますが、細かい部品の取り付けが多く苦労しています。フライホークのキットの製作を彷彿とさせます。部品を取り付けても取り付けても部品が減らない。

次回も継続して上部構造物の製作を行い完成を目指します(2023/3/25)。

製作記(その5)

前回では船体や上部構造物の主な部品の塗装が終わったので、今回からは部品を組み立てていきます。

(51)上部構造物の部品を船体に接着すると船体の波除けと上部構造物の部品に隙間が生じてしまうので((51)の赤丸)、パテをもって合わせ目消しをしました。

(52)～(53)煙突部分の工作です。煙突の網はエッチングパーツがキットに含まれています。エッチングパーツをピンセットや筆の後端の部分などで曲げて瞬間接着剤で接着しました。また、機銃座などの支柱はキットに部品が含まれていますが((53)の赤丸)、太すぎるので0.2mmの真鍮線で支柱を自作しました((52)の赤丸)。(その2)で説明したように、甲板を塗装する前に甲板の元の支柱の取り付け穴をプラ棒で埋めて、真鍮線取り付け用の穴を0.3mmドリルで開けました。あと、汽笛をメンテする台((52)の青丸)にはエッチングパーツのラダーや手すりを追加しました。

(54)艦橋の3脚((54)の赤丸)はキットの部品を使用しました。真鍮線で自作しようかとも思いましたが、それなりによくできているのと微妙に曲がっていたりするので自作するのをやめキットの部品を使用しました。

(55)主な部品の取り付けがほぼ完了しました。

主な上部構造物の部品の取り付けが終わったので、次回からは細かい部品を取り付けていきます(2023/3/18)。

製作記(その4)

前回では甲板のマスキングが完了したので、今回は船体の塗装を行います。

カルカッタの大戦中の迷彩塗装に関してはProfile Morskieの表紙の写真、Warship Perspectives Camouflage Volume One(下写真)、インターネットで見つけた写真などを参考にしました。

カルカッタは1941年頃は3色の迷彩塗装が施されていたようですが、時期によって細かい迷彩パターンは異なっていたようです。使用されていた色に関しても諸説あるようです。大戦初期のイギリス艦の迷彩塗装では海軍の標準船体色である507A(ダークグレー)、507B(ミディアムグレー)、507C(ライトグレー)が使用されていたことが多いので、今回の製作では507A、507B、507Cで私がいつも使用している以下の色を使用しました：

507A(ダークグレー): 331 ダークシーグレー BS381C/638 英空軍迷彩色
507B(ミディアムグレー): 335 ミディアムシーグレー BS381C/637 英空軍バルカン他
507C(ライトグレー): 338 ライトグレー FS36495 米海軍F-18他

数字はGSIクレオスMr.COLORの番号です。

(41)実物の写真を見ながら迷彩塗装のマスキングをしている時に、船体側面の波除けが大戦中では後方に延長されていたことが分かってしましました。0.5mmプラ板で延長しました((41)の赤丸)。0.5mmプラ板は波除けに使用するにはやや厚すぎる感じがしますが、キットの波除けの部品に合わせました。

(42)～(43)エアブラシ塗装はライトグレー → ミディアムグレー → ダークグレーのように薄い色から濃い色の順番で塗装を行いました。 (42)はライトグレーのエアブラシ塗装が終わりミディアムグレーを塗装するためにマスキングした船体です。(43)は(42)と同じ状態の上部構造物です。

(44)～(46)引き続き塗装を進めていきます。(44)はミディアムグレーのエアブラシ塗装をした状態です。(45)はダークグレーを塗装するためにマスキングした状態です。(46)はダークグレーのエアブラシ塗装をした状態です。3色の塗装が終わってからマスキングを剥がし、はみ出た部分の修正塗装を筆で行いました。

(47)～(48)喫水線の塗装を終えて、エナメル系の黒で軽く墨入れしました。写真は主な部品を仮組した状態です。完成するとだいたいこんな感じになります。

船体や上部構造物の主な部品の塗装が終わったので、次回からは部品を組み立てていきます(2023/3/11)。

製作記(その3)

今回も前回からの継続で上部構造物の工作を行います。

(31)～(33)対空砲(主砲)や4連装ポンポン砲の砲座には大戦中にシールドが追加されていたようなので、0.3mmプラ板で追加しました。

(34)第一煙突両舷の4連装機銃台に手すりを取り付けました。

(35)～(36)4連装ポンポン砲と4連装機銃は今回の製作ではファインモールドの部品を使用します。 (35)はキット(トランぺッター)の部品とファインモールドの部品の比較です。トランぺッターの部品もなかなかよくできていますね。 (36)は手持ちのエッチングパーツの残り物を使用して手すりなどを追加したファインモールドの4連装ポンポン砲です。

(37)～(38)船体をエアブラシ塗装するため甲板をマスキングしました。

甲板のマスキングが終わったので、次回は船体の塗装を行います(2023/2/25)。

製作記(その2)

今回は対空砲や煙突、艦橋などの製作を行います。

(21)～(22)対空砲(主砲)の砲身は0.3mm真鍮パイプで置き換えました((21)の赤丸)。(22)は完成した対空砲です。

(23)～(24)煙突の配管はキットでは省略されているので、0.3mm真鍮パイプで追加しました。0.3mm真鍮パイプはいつも通りの方法(以前マハン級の製作で説明した方法)で銅線で煙突に固定しました。また、煙突内部は空洞だと上から見た時に見栄えが悪いので0.3mm厚のプラ板で仕切りを追加しました。仕切りは黒で塗装すると詳細は分らなくなるので、あまり実物通りかは気にせずに作っています。とりあえず、上から見るとそれっぽく見えればいい程度の工作です。

(25)～(25a) 甲板のエアブラシ塗装を行いました。木甲板はクレオスMr.カラーのタン(44番)に明灰白色(35番)を若干混ぜた色を使用しました。鉄甲板の部分はピットロードカラーの15番(現用イギリス海軍グレー(2))を使用しました。両方の色には艶消し(30番)を入れて艶を消しています。機銃座などの支柱はキットの部品では太すぎるので0.2mmの真鍮線で置き換える予定です。元の取り付け穴をプラ棒などで埋めて0.3mmのドリルで穴を開けてから甲板色を塗装しました((26a)の赤丸)。

(26)～(29) 艦橋最上部の部品には遮風板がモールドされていますが((26)参照)、再現度が今ひとつなのでモールドを削り取って自作しました。まず(27)のように0.3mmの角棒(Plastruct MS-10)を接着し、(28)のように0.5mm幅のプラ平棒(Evergreen 100)を接着します。十分接着剤が乾燥したら、余分な部分をデザインナイフで削り取ります。(29)が不要な部分をカットし耐水ペーパーで整形後の状態です。